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看護計画
監修 小田正枝 徳島文理大学 名誉教授
実習でよく挙げる看護診断やよく出合う症状の標準看護計画を紹介します。

Part2
よく出合う症状の標準看護計画

②便秘
小田正枝 徳島文理大学 名誉教授

標準看護計画

期待される結果(看護目標)

日常の排便状態に戻る。

便秘の随伴症状が軽減する。

便秘について理解し、予防方法・排便習慣を習得する。

下剤(便秘薬)の使用回数、量が減少する。

便秘および器質的疾患がある場合は、悪化しない。

[O-P]観察計画
看護計画
  • 現在の排便の状態
  • 入院前の排便習慣
  • 便秘の原因の有無
  • 随伴症状の有無と程度
  • 便秘の悪化の有無
  • 便秘により悪化する恐れのある疾患・状態の有無
  • 便秘のフィジカルアセスメントと検査
  • 便秘の治療と内容
  • 身患者の知識・理解度
根拠・留意点
  • 上記の項目を観察することにより、便秘の種類や程度、原因を明らかにするほか、治療効果や、患者が期待される結果に近づいているかを判断する情報となる。
[C-P]ケア計画
看護計画
  • 食事療法の援助
  • 水分を多く摂取する。
  • 食物繊維を多く含む野菜、果物、豆類、海藻類などを摂取する。
  • 適度に脂肪を含む食品を摂取する。
  • 規則的な食事時間にする。
  • 運動療法の援助
  • 腹部マッサージを行う
  • 体操や散歩など、患者の安静度に合った全身運動を行う。
  • つぼ療法
  • 背部・腰部にある便秘に効くつぼを指圧する。
  • 温罨法
  • 腹部・腰背部を中心に温罨法を行う。温度は皮膚に触れる部分が43〜45℃になるように調節し、熱くないか、必ず患者に確認しながら10分程度行う。終了後、皮膚に異常がないか確認する。
  • 排便習慣の確立の援助
  • 毎日、一定の時間に排便を試みる。胃-結腸反射は朝食後30〜40分が活発なので、その時間に排便を促す。
  • カーテンを閉める、音が気にならないように音楽をかける、においがこもらないように換気するなど、排便環境を調整する。
  • 薬物療法の援助
  • 処方されている下剤の内服管理を行う。
  • 浣腸・坐薬、摘便
  • 下行結腸以下に便が停滞している場合は、浣腸 ・  坐薬の挿入を行う。
  • 肛門部に便の停滞がみられる場合は、摘便を行う。
  • 精神的援助
  • 看護者がどんな小さなことでも相談にのることを伝える。患者の話を傾聴し、ストレスの原因を明らかにする。ストレスに対し、患者自身で対処できるようになるよう、患者とともに対処法を考える。
根拠・留意点
  • 水分不足は便を硬化させ、排便を困難にする。水分を多めに摂取することで、便がやわらかくなるとともに、早朝空腹時の冷水や牛乳の摂取は腸管に物理的・化学的刺激を与え、腸の蠕動運動を亢進させるはたらきがあり、排便に有効である。
  • 食物繊維は消化されないため、腸内容物を増加させ、腸粘膜に機械的刺激を与え、腸の蠕動運動を亢進させるので、便秘に有効である。ただし、けいれん性便秘、器質性便秘の場合、食物残渣の少ない食物を摂取することにより、腸の運動を抑えたり通過障害を防いだりする必要があるので注意する。
  • 脂肪は、潤滑の作用を果たすとともに胆汁の分泌を促し、緩下の作用も果たすことから、便秘に有効である。
  • 不規則な食事時間により、胃-結腸反射が低下するため、一定の時間に食事を摂取する。
  • 腸内容物の輸送方向と同じ方向にマッサージを行うため、腸管を刺激するとともに、腸の蠕動運動を亢進させることができる。ただし、開腹術後の患者や腸の炎症・閉塞を起こしている患者には禁忌なので注意。
  • 適度な運動は、循環をよくしたり、腸に刺激を与えたり、マッサージと同様の効果があるとともに、心身に爽快感を与えるため、ストレスによる便秘にも有効である。
  • 適度につぼを刺激することで、内臓の機能を高める作用がある。
  • 温熱刺激によって排便反射に関する神経を刺激するほか、循環をよくするなど、腸の蠕動運動を亢進させる効果がある。ただし、消化管に穿孔・閉塞・炎症がある場合は禁忌なので注意。
  • 毎日同じ時間に排便を試みることで、条件反射による排便習慣を確立することができる。
  • 便意を抑制すると、便意を感じる閾値が上昇し、生理的刺激で反応しにくくなるため、遠慮やがまんをせずにすぐに排泄できる環境の調整が大切である。
  • 下剤を乱用すると、習慣化してしまい、排便反射が弱まり、自然な排便ができなくなってしまうため、十分な管理が必要である。
  • 浣腸・坐薬、摘便の適応は、硬便による排便困難で肛門裂傷や痔核を生じる場合、血圧上昇によって危険な状態に陥る可能性がある場合、腸閉塞の場合などである。ただし浣腸は、激しい悪心・嘔吐、腹痛がみられる際、また腸管の穿孔や出血がある際は禁忌なので注意。
  • 緊張や不安などの精神的ストレスにより交感神経が優位にはたらき、腸の蠕動運動を低下させ、けいれん性便秘の原因となるため、ストレスの解消は便秘に有効である。
[E-P]教育計画
看護計画
  • 排便習慣の指導
  • 排便のメカニズムをわかりやすく説明し、毎日排便を試みて習慣づけるように指導する。
  • 食事指導
  • けいれん性便秘の場合は、原則として刺激が少なく消化のよい食事を、弛緩性便秘の場合は食物繊維の多い野菜や果物を摂取するように指導を行う。
  • マッサージ指導
  • 腹部マッサージの方法を患者に指導する。
  • 下剤(便秘薬)の内服指導
  • 下剤(便秘薬)を乱用すると、排便反射が低下してしまうことを説明する。
  • 寝たきりの場合の対応の指導
  • 便意があるときは、遠慮せずに看護師を呼ぶように指導する。
根拠・留意点
  • ❶〜❹便秘改善・予防のため、C-P❶❷❺❻について指導する必要がある。
  • 患者が  1 人でトイレに行けない状態の場合、便意があっても遠慮から看護師を呼ぶのを躊躇してしまい、さらに便秘が悪化するという悪循環が生じる。便意があるときに排便を試みることの重要性を患者に理解してもらう必要がある。
リンク

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