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看護計画
監修 小田正枝 徳島文理大学 名誉教授
実習でよく挙げる看護診断やよく出合う症状の標準看護計画を紹介します。

Part1
よく挙げる看護診断の標準看護計画

⑤皮膚統合性障害
下舞紀美代 関西看護医療大学看護学部看護学科 教授

定義

表皮と真皮の両方またはどちらか一方が変化した状態

標準看護計画

期待される結果(看護目標)

皮膚統合性障害の程度で成果は異なる。2つほど、成果の例を挙げておく。下線の部分は空欄にしておき、立案時に程度をみて設定する。

仙骨部周囲の3×3cmの発赤が1週間後には消失する。

肩甲骨部周囲の3×3cmの表皮剝離が1週間後には1×1cmになる。

[O-P]観察計画
看護計画
  • 皮膚の状態
  • 乾燥、湿潤、傷、熱感、発赤など
  • 感覚
  • 触覚・圧覚・痛覚・振動覚・温度覚など
  • 圧迫(骨の突出による臥床時の圧迫や、窮屈な寝衣やゴムによる圧迫など)
  • 体動制限
  • 臥床時間
  • 栄養状態
  • 意思の疎通
  • 自己免疫機能の低下
  • 血液検査データ
  • 血液成分の異常:白血球数(WBC)の増加、凝固因子の変化、赤血球数(RBC)・血小板数(Plt)の減少、総タンパク(TP)、アルブミン(Alb)など
根拠
  • 表皮や真皮の変調を知るための情報となる。皮膚の乾燥は、皮膚表面に小さな亀裂をつくりやすく、湿潤は皮膚表面が剝がれやすくなる。局所の熱感や発赤は、炎症や感染をみるために必要である。
  • 感覚に異常がある場合、外傷の危険に皮膚がさらされている。局所に持続的な圧迫があったり、高温のお湯や物が触れていても、気づくことができない。
  • 圧迫によって血流が途絶えたり、局所の圧迫によって皮膚組織を傷つけることがある。
  • 何らかの疾患で体動が自由にできない場合があると、同一体位が続き、同じ場所に圧迫が持続的に加わる。その場合、他動的に看護者が体位を調整する。
  • 同一部位の長時間の圧迫を防ぐ目的もあるが、人は運動することで、多くの酸素を体内に吸収する。酸素は体内を循環し、皮膚組織も活性化させる。長い臥床は酸素の循環を緩慢にする。
  • るい痩(やせ)による骨の突出、タンパク質やアルブミンの不足による皮膚の脆弱性や血液成分に影響する。
  • 言語障害や外界の刺激を正しく認知できない場合、苦痛を看護者に知らせることができない。
  • 通常であればあまり身体に影響しない病原菌であっても、免疫機能が低下していると感染を起こし、皮膚組織に変調をきたすことがある。
  • 皮膚の再生や活性化、強化などに必要な血液成分が満たされているかをアセスメントする。凝固因子が異常値の場合、ささいな外的刺激でも皮下出血を起こす。
[C-P]ケア計画
看護計画
  • 体位変換
  • 移乗の際の介助
  • 除圧機器の使用
  • 体圧測定
  • 離床を進める。
  • 栄養の調整
  • 患者の寝衣、シーツのしわを伸ばす。
  • 殿部や陰部の清潔
  • 陰部洗浄を毎日行う。
  • 爪の手入れをする。
根拠
  • O-Pの根拠で述べたように、皮膚に影響する要因を看護介入では除去していかなければならない。
  • C-P・E-Pは、O-Pの観察・測定によって多少方法が異なってくるが、原則は表皮・真皮の変調をきたさないように看護することである。ここに挙げているC-Pは、皮膚を栄養している血管を守り、血流を維持し、栄養摂取により筋や組織を強化することを念頭においたものである。栄養低下の場合は少量でも栄養価の高い、高タンパクな食物を選択する。嗜好に合わせた食事メニューの改善などを行う。
[E-P]教育計画
看護計画
  • 長時間同一体位にしない。
  • バランスのとれた栄養摂取の必要性(皮膚の破綻や脆弱性の改善、血液成分の安定)
根拠
  • 臥床時間が多い患者には、自ら体位交換の必要性を理解し、実施することで創治癒の悪化を防ぐことができる。
  • 皮膚を形成しているのはタンパク質である。また、皮膚の表面は汗腺から分泌される汗、脂腺から分泌される脂により、潤いを保っている。低タンパクや低脂肪、脱水になると皮膚の適度な湿潤が維持できなくなる。貧血は組織への酸素運搬を減少させ、細胞への酸素供給量が減少し、皮膚の再生を阻害する可能性がある。また、皮下脂肪は外界からの衝撃を緩衝し、皮膚に弾力性をもたらす。そのため外界からの刺激による皮膚損傷を予防することに役立つ。

*T.ヘザー・ハードマン,上鶴重美 原書編集,上鶴重美 訳:NANDA-I看護診断-定義と分類2018-2020 原書第11版.医学書院,東京,2018:515.より転載

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