プチナース国試部
真剣に解いていたはずの過去問、よく読むと「あれれ?」。過去問におもしろく、まじめにツッコミを入れます!
今月のツッコミ!
まるで話を聞いていない!
- <no.09>第104回午後問題66
- Aさん(38歳、女性、パート勤務)は、腹痛のため、姉に付き添われて救急外来を受診した。診察時、身体には殴られてできたとみられる複数の打撲痕が確認された。腹痛の原因は夫から蹴られたことであった。Aさんは「家に帰るのが怖い。姉には夫の暴力について話したくない」と泣いている。
外来での看護師の対応で適切なのはどれか。
- 打撲痕を姉に見てもらう。
- 配偶者暴力相談支援センターに通報する。
- 暴力を受けたときの状況を具体的に話すことを求める。
- Aさんが日頃から夫を怒らせるようなことがなかったか聞く。
解答2 配偶者暴力相談支援センターに通報する。
コーナータイトル「おもしろ」というのが不謹慎に感じられるような状況ですね。この問題には現代文の試験問題のような趣があります。というのは、「姉には夫の暴力について話したくない」と言っているそばから打撲痕を姉に見せようとする1のナースは、話を聞いていましたか? と思うからです。こういう“あり得ない選択肢”、ありませんでしたか?
すでに“複数の打撲痕”というあきらかな証拠があるのに、3のように具体的なことを聞こうとするのも変ですし、4にあるようにAさんが夫を怒らせたとしても暴力をふるっていいということにはなりません。外来診察室は警察の取り調べや裁判ではありません。配偶者暴力相談支援センターか警察に通報するのが正しく、2が正解です。この事例のように被害者の生命または身体に重大な危害が差し迫っていることがあきらかな場合には、本人の同意が確認できなくても通報することが求められます。特に4には「あらやだ、興味本位かしら?」とつっこみましょう。
さて、じつは何よりも気になるのは蹴られたことによる腹痛……。重症でないとよいのですが。

執筆:大塚真弓(看護師国家試験対策アドバイザー)
Illustration:Masafumi Ono
