プチナース国試部
過去問をもとに、正答につながるポイント、国試対策のポイントをていねいに解説!
- <no.28>第92回午前問題97
- 筋萎縮性側索硬化症の患者に特徴的な症状はどれか。
- 皮膚感覚の鈍麻
- 睡眠時の尿失禁
- 記憶の著明な減退
- 嚥下した液体の鼻孔への逆流
解答4 嚥下した液体の鼻孔への逆流
1.皮膚感覚の鈍麻
→× 運動ニューロンが侵される疾患であり、感覚神経は障害されません。
2.睡眠時の尿失禁
→× 自律神経の機能は保たれるため、膀胱直腸障害は現れません。また、褥瘡や眼球運動障害が見られないのもALSの特徴です。
3.記憶の著明な減退
→× 知的能力の低下も起こりません。ただし、最新の研究ではごく少数ですが認知機能障害のある筋萎縮性側索硬化症の患者が報告されているので注意してください。
4.嚥下した液体の鼻孔への逆流
→× 球麻痺症状のひとつで、舌や口蓋筋・咽頭筋が障害されます。最終的には呼吸筋の麻痺が起こります。
正答につながるポイント!
運動に関しては大脳皮質の運動野・脳幹から脊髄の前角細胞までが一次運動ニューロン、前角細胞から神経―筋接合部までが二次運動ニューロンに分けられます。
筋萎縮性側索硬化症(ALS*)は中年以降に発症することが多く、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が進行性に変性、消失していく原因不明の疾患です。表の3タイプに大きく分けられますが、呼吸筋麻痺が早期から顕著な例など、病状は多岐に渡ります。
延髄には舌咽神経・舌下神経・迷走神経などの神経核があるため、延髄の病変によって起こる構語障害や嚥下障害を球麻痺症状といいます。延髄につながる錐体路や皮質球路が障害されても同様の症状となり、これを区別して仮性球麻痺と呼ぶことがあります。
*【ALS】amyotrophic lateral sclerosis
国試対策のポイント!
筋萎縮性側索硬化症について、感覚障害、眼球運動障害、膀胱直腸障害および褥瘡の症状が見られないことを「4大陰性徴候」としています。
対策として人工呼吸器のケアが関連しています。
表 筋萎縮性側索硬化症(ALS)のタイプ
普通型 | 進行性球麻痺型 | 偽多発神経炎型 |
●上肢の筋萎縮と筋力低下がおもで、下肢は痙縮を示す | ●構音障害、嚥下障害といった球麻痺症状が主体 | ●下肢から発症し、下肢の腱反射低下や消失が早期から起こり、二次運動ニューロンの障害が前面に出る |
難病情報センター:筋萎縮性側索硬化症(ALS)(指定難病2).を参考に作成
https://www.nanbyou.or.jp/entry/214(2020.5.12アクセス)
〈参考文献〉
1.井手隆文,竹村信彦,寺尾安生,他:系統看護学講座 専門分野Ⅱ 成人看護学[7]脳・神経.医学書院,東京,2010:41.
執筆:大塚真弓(看護師国家試験対策アドバイザー)
