プチナース国試部
過去問をもとに、正答につながるポイント、国試対策のポイントをていねいに解説!
- <no.16>第102回午後問題44
- 腰椎転移のある食道癌の患者。癌性疼痛にフェンタニル貼付剤を使用しているが、右下肢に神経因性疼痛が頻発している。1日に4~6回レスキューとしてのモルヒネ注射薬を使用しており、入眠すると15秒程度の無呼吸がみられる。
緩和ケアチームで検討すべき対応はどれか。
- 酸素吸入
- 鎮痛補助薬の使用
- モルヒネ注射薬の増量
- フェンタニル貼付剤の増量
解答2 鎮痛補助薬の使用
1.酸素吸入
→× 無呼吸があるので酸素吸入は意味がある可能性がありますが、鎮痛効果はありませんので優先順位は下がります。
2.鎮痛補助薬の使用
→◯ 神経因性疼痛では鎮痛補助薬の使用が推奨されています。レスキューを使用しても疼痛があるため、鎮痛補助薬を検討するのが最善であり、これが正解です。
3.モルヒネ注射薬の増量
→× モルヒネ注射薬の副作用に呼吸抑制があるので、無呼吸がある状況ではこれ以上の増量は厳しいと考えます。
4.フェンタニル貼付剤の増量
→× フェンタニル貼付剤の増量は、フェンタニル貼付剤にも呼吸抑制作用があること、オピオイドでは十分な鎮痛効果が得られていないことから適切な選択肢とは言えません。
正答につながるポイント!
さらっと読めてしまう文章ですが、「フェンタニル貼付剤」「神経因性疼痛」「鎮痛補助剤」といった語がきちんと理解できていますか。実習の場合ならばくわしく調べていく必要がありまた調べていくべきですが、試験問題ではそのときの自分が知っている範囲で解釈して解かねばなりません。
フェンタニル貼付剤は、含まれているフェンタニルは経口モルヒネと比較して100倍の効力があるとされる※強オピオイド鎮痛薬です。
神経因性疼痛は痛み信号を伝達する神経自体が傷害されているため、組織の損傷や機能障害が改善しても神経自体の異常興奮が持続して痛みが起こる状態で、オピオイド鎮痛薬であっても効果が得られにくい痛みです。
鎮痛補助薬はWHO三段階除痛ラダーにも出てきます。非オピオイド・弱オピオイド・強オピオイドを除いた鎮痛作用をもつ薬の総称です。ステロイドをはじめ、精神安定剤、抗うつ薬、抗てんかん薬、局所麻酔薬などです。
※換算値としては1:100あるいは1:150を用いるが、個人差があることを考慮する
国試対策のポイント!
がん性疼痛については基本の考えかたと薬の種類について学習しておきましょう。国試に対応するには、薬理学の教科書ではやや不十分です。
表 鎮痛薬の種類・特徴・副作用
薬品名 | 特徴 | 副作用 |
NSAIDs(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs:非ステロイド性抗炎症薬) | インドメタシン、ロキソプロフェンナトリウム水和物、アスピリン、メフェナム酸などが該当 | 胃腸障害、腎障害、ショック、出血傾向など |
(アセトアミノフェン)※ | (非ピリン系、抗炎症作用はない) | 肝障害など |
コデイン | 鎮痛・鎮静のほか、鎮咳・止瀉作用をもつ | 依存性、呼吸抑制、麻痺性イレウス、眠気、眩暈など |
ジヒドロコデイン | 鎮痛・鎮静・鎮咳作用 | 依存性、呼吸抑制、麻痺性イレウスなど |
モルヒネ | 内服薬・座薬・注射薬がある | 便秘、呼吸抑制、嘔気・嘔吐など |
オキシコドン | 注射薬・内服薬がある
(モルヒネは腎障害があると使用できないが、オキシコドンは使用可能であり、モルヒネに比べせん妄が少ない) |
便秘、呼吸抑制、嘔気・嘔吐など |
ブプレノルフィン | 注射薬・座薬・貼付薬がある
(ブプレノルフィンのような非麻薬性鎮痛薬は鎮痛作用にも有効限界があるため、軽度〜中等度の強さの痛みに用いられることが多い) |
呼吸抑制、血圧低下、痙攣など |
フェンタニル | 注射薬・貼付薬・バッカル錠がある | 依存性、呼吸抑制、血圧低下など |
※作用機序の違いから、アセトアミノフェンはNSAIDsではない
執筆:大塚真弓(看護師国家試験対策アドバイザー)
