必修予想問題
予想問題で必修問題対策。あわせて知っておきたい知識も解説!
- <no.16>感染防止対策
- 陰圧に保った個室隔離が最も必要な状態はどれか。
- 排菌状態
- 脳圧亢進
- 免疫不全
- 低酸素血症
解答1 排菌状態
1.〇 外部に病原体を排出するような状態では陰圧(内側に空気の圧がかかる)に保った個室で隔離する。
2.4.× 脳圧亢進や低酸素血症で陰圧を保った個室に入る必要はない。
3.× 免疫不全など外部からの微生物から隔離する必要がある場合には陽圧(外側へと空気の圧がかかるため、外部からの侵入がない)に保った個室で隔離する。
国試に向けておさえておきたい、「陽圧と陰圧」について学習を深めましょう。
①胸腔内圧は「つねに陰圧」である
「胸腔内圧はつねに陰圧である」とはどういう意味でしょうか。大気圧と比較して圧力が高い状態が陽圧、大気圧と比較して圧力が低い状態が陰圧です。空気は圧力の高いほうから圧力の低いほうへ移動する性質をもちます。
肺は胸郭の中で2枚の胸膜(壁側胸膜と臓側胸膜)に包まれてつくられる胸膜腔に入っており、胸膜腔は大気圧と比べてつねに陰圧に保たれています。図のような実験装置をつくると、そのしくみを目で見て理解できるでしょう。
ゴム膜に相当する横隔膜が下降すると、ビンの中に生じている胸腔内圧が大きく陰圧(吸息相、安静呼吸時で-7~-6cmH2O)となり、風船に相当する肺に空気が流入してきます。次にゴム膜を離すと、胸膜のもつ弾性と肺による弾性収縮力により風船から空気が抜けていきます※。胸腔内圧の陰圧が小さく(呼息相、安静呼吸時で-4~-2cmH2O)なります。
なお、体外と気体のやりとりをする気道の圧は、吸息時には陰圧で、呼息時には陽圧となります。
※実際の人体では、ビンに相当する胸郭も大きさを変える。
図 呼吸による胸腔内圧の変化をみる実験
②人工呼吸器は「陽圧換気」である
人工呼吸器のしくみを理解するにも、呼吸の陽圧と陰圧の解説が役に立ちます。呼吸機能が障害されて、自力で肺へ空気を入れることができなくなれば、人工的に外から陽圧をかけて空気を送り込むことになります。そのための人工呼吸器による管理では、気管挿管や気管切開によって気道を確保する侵襲的な陽圧換気が行われます。
一方、気管挿管や気管切開を行わず、マスクを使用して陽圧換気を行うのが非侵襲的陽圧換気法〈NPPV*〉です。換気を補助する方法なので、意識レベルが正常で自発呼吸があり、患者さんが協力的であることなどが条件です。
*【NPPV】noninvasive positive pressure ventilation
③病室内の環境にも「陽圧」と「陰圧」がある
空気は気圧の高い場所から低い場所へと流れる性質があると説明しました。病室内が陽圧であれば、病室の出入り口から病室の外へと空気が流れ、逆に病室内が陰圧であれば病室の出入口から病室の外の空気を取り込みます。
上の問題のように、免疫不全などで外部からの微生物を病室に入れないようにするには陽圧(外側へと空気の圧がかかるため、外部からの侵入を防ぐ)をかけなくてはなりません。反対に、病室内の微生物を外に出さないようにするには陰圧をかけます。
〈引用・参考文献〉
1.坂井建雄 著者代表:系統看護学講座 専門基礎分野 人体の構造と機能〔1〕 解剖生理学 第11版.医学書院,東京,2022.
2.三浦まき,中村綾子 編集:すべてのナースに使える! 人工呼吸ケア.エキスパートナース 2022;38(6).
執筆:大塚真弓(看護師国家試験対策アドバイザー)
