必修予想問題
予想問題で必修問題対策。あわせて知っておきたい知識も解説!
- <no.32>職業と疾病
- 業務上疾病の範囲を定めているのはどれか。
- 労働契約法
- 労働安全衛生法
- 労働基準法施行規則
- 労働災害補償保険法
解答3 労働基準法施行規則
業務上疾病の範囲は3の労働基準法施行規則によって規定されている。労働基準法75条は、労働者が業務上負傷、または疾病にかかった場合には事業主は費用を負担し必要な療養を行わなければならないとしている。また労働基準法84条で、労働災害補償保険法に基づく災害補償がなされた場合には事業主は災害補償の責を逃れることができるとも定められている。労働災害に遭った場合、休業補償給付などの労災保険給付の請求を労働基準監督署長あてに行う。なお休業4日未満の労働災害については、労災保険ではなく、使用者が労働者に対し休業補償を行わなければならない。1、2、4の法律は業務上疾病の範囲を規定していない。
①業務上疾病の範囲
(1)業務上の負傷に起因する疾病
(2)物理的因子による疾病(潜水病、騒音による難聴など)
(3)身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病(腰痛、腱鞘炎など)
(4)化学物質等による疾病(化学物質に起因する呼吸器疾患・皮膚疾患、酸素欠乏症など)
(5)粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症またはじん肺と合併した疾病
(6)細菌、ウィルス等の病原体による疾病
(7)がん原性物質もしくはがん原性因子、またはがん原性工程における業務による疾病(石綿業務による肺がん、または中皮腫など)
(8)長期間にわたる長時間業務による疾病(脳出血、くも膜下出血、心筋梗塞など)
(9)心理的に負担を与える業務による精神疾患
(10)その他厚生労働大臣の指定する疾病
(11)その他業務に起因することの明らかな疾病
②業務上疾病の統計
業務上疾病の統計を5年分挙げると(表1)、次のようなことがわかります。
●コロナウイルス感染症の件数を除外したデータでは、令和3年以降業務上疾病の総数は増加傾向にある。おおむね8000~1万件程度で推移している。
●令和4年は総数のうち94.3%がコロナウイルス感染症によるものだった。
●災害性腰痛は増加傾向にある。総数のうち、令和3年66.9%、令和4年62.7%を占める(コロナウイルス感染症による件数を除いた値)。
●令和5年は熱中症が前年と比較して増加した。
●コロナウイルス感染症を除くと病原体による疾病は少ない。
年度 | 総数 (うちコロナウイルス感染によるものを除いた件数) |
死亡数 (うちコロナウイルス感染によるものを除いた死亡数) |
負傷に起因する疾病(うち災害性腰痛) | 物理的因子による疾病(うち熱中症) | 病原体による疾病(うちコロナウイルス感染症によるもの) |
令和元年(2019) | 8,310件 (8,310件) |
80件 (80件) |
6,015件 (5,132件) |
1,118件 (829件) |
113件 (0件) |
令和2(2020) | 15,038件 (8,997件) |
98件 (78件) |
6,533件 (5,582件) |
1,214件 (959件) |
6,291件 (6,041件) |
令和3(2021) | 28,071件 (8,739件) |
157件 (72件) |
6,731件 (5,847件) |
770件 (561件) |
19,494件 (19,332件) |
令和4(2022) | 165,495件 (9,506件) |
116件 (100件) |
7,081件 (5,959件) |
1,115件 (827件) |
156,149件 (155,989件) |
令和5(2023) | 44,133件 (10,496件) |
109件 (105件) |
7,483件 (6,132件) |
1,417件 (1,106件) |
33,916件 (33,637件) |
〈引用・参考文献〉
1.一般財団法人厚生労働統計協会:国民衛生の動向 2023/2024.
一般財団法人厚生労働統計協会,東京,2023.
2.総務省統計局:e-Stat 政府統計の総合窓口 業務上疾病発生状況.
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450218&bunya_l=03&tstat=
000001144406&cycle=7&tclass1val=0(2024.11.18アクセス)
執筆:大塚真弓(看護師国家試験対策アドバイザー)
