1.× 「打撲痕を姉に見てもらう」ことは、Aさんが夫の暴力を姉には知られたくないと言っていることと、姉に見てもらうことが診察や治療に関係があるとは考えにくく、適切とは言えません。
2.○ 正しい対応です。
3.× 「暴力を受けたときの状況を具体的に話すことを求める」については腹部をどのような形で受傷したのかを聞くことは必要ですが、痛みがあり、泣いている状況で具体的に状
況を聞くのは適切とはいえません。
4.× 「Aさんが日頃から夫を怒らせるようなことがなかったか聞く」という行為は医療者がすべきことではありません。怒らせたからといって暴力をふるっていいということではありませんし、治療と関係がありません。
状況設定問題の要素のある一般問題です。おそらく、2と3で迷うのではないかと思います。
2の「配偶者暴力相談支援センターに通報する」については表1をみてください。「努める」という表現ではありますが、被害者本人の意思を尊重することが求められているので、本人の意思を確認して通報するのがベストです。この点が気になって2を選ぶことができなかった受験生もいるかもしれませんが、複数の打撲痕があって腹痛が起きている状況であれば生命の危険もあると考え、すぐに通報したほうがよいでしょう。これが答えです。
表1 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律〈DV防止法〉
DV被害者に医療者として接するときは道徳的な対応よりも、安全の確保とすみやかな医療を行うことを優先します。そのうえで、配偶者暴力相談支援センター等の利用に関する情報を提供する、被害者の同意を尊重するよう努めながら配偶者暴力相談支援センターまたは警察官に通報するなどの対応をとります。
〈引用文献〉
1.内閣府 男女共同参画局:配偶者からの暴力被害者支援情報.
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/01.html(2022.1.21アクセス)
執筆:大塚真弓(看護師国家試験対策アドバイザー)