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看護計画
監修 小田正枝 徳島文理大学 名誉教授
実習でよく挙げる看護診断やよく出合う症状の標準看護計画を紹介します。

Part1
よく挙げる看護診断の標準看護計画

④身体損傷リスク状態
下舞紀美代 関西看護医療大学看護学部看護学科 教授

定義

個人の適応資源や防御資源と、周囲の環境条件との相互作用の結果、身体を損傷しやすく、健康を損なうおそれのある状態

標準看護計画

期待される結果(看護目標)

環境や身体の変化に適応する方法を自ら見いだし、身体の損傷を防止する。

[O-P]観察計画
看護計画
  • 歩行状態
  • 聴力、視力
  • 認知、記憶、思考
  • 使用中の薬剤
  • 睡眠時間
  • 栄養状態
  • 居住環境(空気の汚染、衛生状態、採光など)
  • 自己免疫機能の低下
  • 皮膚の脆弱性
  • 検査データ
  • 血液成分の異常:白血球数の増加、凝固因子の変化、赤血球数・血小板数の減少
  • 電解質バランスの異常
根拠
  • 歩行が不安定であると、転倒などによって身体の損傷をきたす危険性がある。
  • ❷❸患者自身が危険環境を知覚するのが困難であるかどうかが推察される。
  • 薬剤によっては筋力の虚脱や催眠作用のあるものがあり、重要な観察項目である。
  • ❺❻休息不足による疲労や、栄養不足による皮膚の保護作用の低下が、身体損傷をまねく場合がある。
  • ❼❽❾外からの病原菌の侵入と、それによる身体の損傷を防ぐために必要な観察項目である。
  • 低タンパク血症や血小板数の減少は軽い摩擦でも身体の損傷をきたしやすい。また、赤血球数の減少は組織の低酸素状態をまねき、身体の損傷をきたしやすい。白血球数の減少は免疫力の減少につながる。
[C-P]ケア計画
看護計画
  • 環境(段差のある通路、足に合わない履物など)の調整
  • 移動の際の介助
  • 栄養の調整
  • 栄養低下の場合:少量でも栄養価の高い食物を選択する。嗜好に合わせた食事メニューの改善など
  • 栄養過多:摂取カロリーの算出と食事メニュー、栄養素のバランスなど
  • 身体機能訓練(筋力の維持・増進)
  • 患者に合った補聴器、眼鏡を提供する。
  • 夜間は、足元を明るくする。
  • 爪の手入れをする(図1)。
根拠
  • ❶❷転倒やつまずきによる損傷を防止するために必要である。予測されない段差は歩行を不安にする。また、足に合わない履物は、痛みを生じたり、途中で脱げたり、不要なところに力が入ったりして歩行を妨げる。小児や高齢者の場合など、年齢によっても必要な看護が異なってくる。
  • 栄養状態の低下や偏りは、免疫機能や血液成分に影響する。また、皮膚の破綻や脆弱性をまねき、病原菌の侵入を容易にする。
  • 身体機能の維持・増進が目的である。数日臥床していると筋力は低下し、歩行が不安定になるため、身体機能の訓練は毎日行う必要がある。
  • 歩行の障害となる物をより早く知覚することに役立つ。
  • 夜間は足元が見えにくく、わずかな段差でもつまずきやすいため、身体損傷の危険性が増す。安全な歩行のために必要である。
  • 瘙痒感のある患者や、小児などが掻破痕(そうはこん)を残すことが考えられるので、爪は切っておいたほうが安全である。
[E-P]教育計画
看護計画
  • 履き慣れた、自分の足に合った靴(表1)の選択の必要性
  • バランスのとれた栄養摂取の必要性(皮膚の破綻や脆弱性の改善、血液成分の安定、筋力の維持)
根拠
  • 自分に合っている履物だと患者自身が思っていても、歩行が不安定で姿勢が崩れている場合があるため、観察しながら説明を進めるほうが効果的である。
  • 皮膚の損傷や筋力の低下、出血傾向などによる身体の損傷を防止する。

図1 爪の手入れ

爪の手入れ

表1 よい靴の条件

  • つま先が靴にあたっていない
  • 靴の中で5本の足趾が十分動かせる
  • 足が甲の部分でしっかり保護・固定されて、前後のぶれが起こらない
  • 土踏まずやかかとのカーブと靴のカーブが一致している
  • 靴の中底のクッション性がよい
  • 靴の縫い目の硬い部分があたらない

*T.ヘザー・ハードマン,上鶴重美 原書編集,上鶴重美 訳:NANDA-I看護診断-定義と分類2018-2020 原書第11版.医学書院,東京,2018:499.より転載

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