Part1
よく挙げる看護診断の標準看護計画
②活動耐性低下*
安藤敬子 大分大学医学部看護学科 助教
定義*
必要な日常活動または望ましい日常活動を持続や遂行するための、生理的あるいは心理的エネルギーが不足した状態
標準看護計画
期待される結果(看護目標)
●日常活動に耐えられる循環・呼吸機能を維持または増進することができる。
●日常活動を持続または遂行するための心理的エネルギーが維持できる。
[O-P]観察計画 |
看護計画 |
- ❶バイタルサイン・SpO2
- ❷呼吸状態(起座呼吸の有無)・パターン
- ❸呼吸音・副雑音
- ❹息切れ、呼吸困難感、息苦しさなどの自覚症状
- ❺チアノーゼや冷感の有無
- ❻活動量に対する自覚症状
- ❼心音
- ❽心電図
- ❾血液、血液ガス検査
- ●RBC、Hb、Ht、PaO2、PaCO2、BE
- ❿画像診断
- ●胸部X線写真
- ●CT、MRI
- ⓫喫煙歴
- ⓬職業
- ⓭既往歴
- ●COPD
- ●気胸
- ●喘息発作
- ●脳血管障害
- ●外傷
- ⓮その他
- ●体重や浮腫の有無、水分摂取量や尿量
- ●大量の出血
- ⓯活動への意欲
- ⓰活動レベル
- ⓱倦怠感や脱力感
- ⓲日常活動に対する意欲のレベル
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根拠 |
- ❶循環や呼吸機能の観察を行う。もし、酸素を十分に取り込むことができない場合、代償機構がはたらく。例えば、呼吸数や脈拍の増加などである。また、SpO2を測定することで末梢まで十分に酸素を運べているかを観察する。ただし、SpO2はHbと酸素の結合状態を示しているものなので、Hb自体の量が低下している場合、末梢まで十分な酸素が行き渡っているとはいえないので注意が必要である。
- ❷起座呼吸があれば、トイレにも行けないほどの息苦しさがある。また、呼吸パターンの観察を行うことにより、障害を起こしている部位の予測ができる。
- ❸全身の細胞の営みに必要な量の酸素を体のなかに取り込む肺の機能や状態を推測することができる。併せて、X線写真などを用いると明らかである。
- ❹❻活動をして息苦しいのか、活動する前から息苦しいのか、自覚があるかを確認する。
- ❺十分に酸素を体に取り込めていないと、酸化ヘモグロビンよりも還元ヘモグロビンのほうが多くなり、口唇や末梢にチアノーゼが生じる。
- ❼❽❾血液を全身に運ぶ機能が十分に整っているかどうかを確認する。
- ❿病巣や炎症の部位などの位置や状態を確認する。
- ⓫長期間の喫煙により、肺の硬化や分泌物の増加のため、気道の浄化および肺のコンプライアンスが低下する。
- ⓬職業によっては、有害な物質を呼吸の際に吸入するおそれがある。
- ⓭肺機能の低下により酸素を含む血液が十分に循環していない状態である。また同様に、脳血管疾患や外傷によりそれぞれの部位で循環が途絶えてしまう場合でも、活動耐性低下が起こる。既往歴も把握する必要がある。
- ⓮循環血液量が増加すると循環機能に影響を及ぼす。心不全の悪化に伴う肺うっ血を起こすため、体重や浮腫の有無、水分摂取量や尿量を観察する必要がある。逆に、外傷や手術などでの大量出血によって循環血液量が減少し、血圧の低下が起こる。また、赤血球などの喪失によっても、活動耐性低下が起こる。
- ⓯⓰実際に自身でできる行動と本人の望んでいる活動レベルとのギャップについて確認し、あせりや不安についてもとらえる。
- ⓱⓲自覚される身体的な症状や状態は活動への意欲に影響する。
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[C-P]ケア計画 |
看護計画 |
- ❶息苦しくない姿勢の保持
- ❷衣類の選択
- ❸酸素吸入
- ❹薬物療法の援助
- ❺日常生活行動に対する援助
- ❻その他
- ●呼吸訓練や呼吸・心臓リハビリテーションについての援助
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根拠 |
- ❶❷胸郭の動きを抑制しない姿勢(起座呼吸など)や体位の工夫、衣類の選択を行う。
- ❸医師の指示に従い酸素の投与を行う。
- ❹循環障害や呼吸機能の改善のため、医師の指示どおりの薬物投与を行う。また、その反応(例えば尿量や血圧の値、自覚症状など)を確認する。薬物によっては併用禁忌の食品などもあるので注意する。
- ❺日常生活行動やセルフケアも、息切れや動悸などによって実施できないことがあるので援助する。
- ❻循環機能や呼吸機能の維持向上のために実施していることがある。状態の変化や負荷による変化などの観察を行いながら、援助することが必要である。
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[E-P]教育計画 |
看護計画 |
- ❶禁煙指導
- ❷水分制限や食事制限、禁煙などの生活改善について患者に説明する。
- ❸必要であれば家族にも❷の説明を行う。
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根拠 |
- ❶呼吸機能の低下をまねかないために禁煙指導を行う。
- ❷❸循環血液量の増加や体重増加による心機能への影響が懸念される。そのため、患者または家族に十分に説明を行う。
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*T.ヘザー・ハードマン,上鶴重美 原書編集,上鶴重美 訳:NANDA-I看護診断-定義と分類2018-2020 原書第11版.医学書院,東京,2018:279.より転載